1.フィラリアの感染の始まる日はどのようにして求められている?
フィラリア症の感染期間はHDU(Heartworm Development heat Unit)に基づいて推察することができます。HDUとは、犬糸状虫を媒介する蚊の体内でミクロフィラリアが成熟するために必要な積算温度の単位のことです。
HDUによるフィラリア症の感染期間は都道府県庁所在地の気象台の気温データ(一部を除く)に基づいた理論値です。(参考:的野 英夫 第10回日本犬糸状虫研究会 2007年発表資料)

まず、1日の最低気温と最高気温を対して2で割った数値を日平均気温として求めます。さらに、1日のHDUは日平均気温からミクロフィラリアが蚊の体内で成長することができる臨界温度とされる14℃を差し引いた数値として計算されます。
1日HDU=日平均気温-臨界温度(14℃)
日平均気温=(日最高気温+日最低気温)÷2
そして、求められた1日HDUを積算して130を超えた日を感染開始日としています。
イメージでは春の桜開花宣言の積算温度みたいな感じですね。
フィラリアの場合は、一日の最高気温と最低気温を足して2で割った数値(℃)から14(℃)を引いた数値(℃)を毎日加算していき(ミクロフィラリアが温度条件によってすこしづつ成長していくのに必要な要件)、130(℃)に達した日を感染開始日(温度条件に基づき、犬にフィラリア症を媒介するのに必要十分な成長を遂げたと推察される日)として、フィラリア予防開始の目安とします。

HDUを用いた近年の犬市場中感染期間は動物用医薬品を取り扱う製薬会社のHPでも公開されています。HDUを用いた近年の犬糸状虫感染期間(2024年データ集計) | SAC NAVI|共立製薬
2.予防薬はいつ始めていつ終わる?
さて、HDUにもとづいて感染開始日が求められたら、1日でも過ぎてしまったらとりかえしのつかないことになってしまうのでしょうか?また、蚊をみかけなくなったり、1日の平均気温が14℃を下回ったりしたら予防薬はもう必要ないのでしょうか?
フィラリアは、蚊に媒介されて犬の体に入ってから(感染成立)、6~7か月かけて成虫になり、次の世代のミクロフィラリアを生みだします。一般にフィラリア予防薬として投与されている薬は感染後1か月未満の幼虫には効果がありません。主に感染後30~60日経過し、犬の体内(筋膜下、皮下組織、脂肪組織、筋肉内)で成長中の第4期幼虫に効果を発揮します(薬の種類によっては感染2週間後の第3期幼虫にも効果を示すものもあります)。また、感染後60日を過ぎた幼虫(第5期幼虫)は血管内に入り込み予防薬を投与しても駆虫されずに肺動脈や心臓に到達してしまいます。

そのため、フィラリア予防薬は感染をしてから1か月以内に予防を開始し、最後に感染してから1か月以上2か月未満に投薬を終了するのが理想的な投与期間となります。年をまたいでフィラリアを成虫にさせないために、もう蚊が飛ばなくなった時期の予防が最も大事な投薬となる可能性が高いです。
また、前に述べたように、フィラリアは6~7か月かけて成虫になるので、主に春先に実施する血液検査は、検査実施の半年程度前に感染をしたフィラリアが心臓に寄生しているか否かのチェックをしているということになります。検査方法はいくつかありますが、最も推奨され、感度が高いとされるフィラリアの抗原検査は、成熟した雌のフィラリア成虫の卵巣を免疫学的に検出するものになります。
HDUに基づいて算出される感染開始日は、あくまでも測定地点による気温で計算されており、実際に自分の犬のいる場所にとっては推測データとなります。予防意識が高まり、フィラリア陽性の犬が減ったために自分の愛犬がフィラリア症に感染をしてしまう確率はずいぶんと下がりました。しかし科学的なデータに基づいた予防をしようと思うと、東京の多摩地区では平年通りの気温であれば投薬開始はゴールデンウイーク明けごろ、終了は11月中旬以降から12月初旬までということになるでしょうか。

しかし、昨今の冬なのに暖かすぎる日が続くような異常気象が続くと、正確な予防薬の投与期間を断定するのはなかなか難しいですね。
3.フィラリア症予防の薬は予防薬ではなくて駆虫薬
フィラリアの予防薬のために投与する薬は、蚊に刺されることを予防するわけでもなく、フィラリアが寄ってこないようにバリアを張って防御する薬でもありません。
蚊は、モコモコの被毛の豊かな部分よりも毛の薄い鼻先などを狙って吸血します。そして吸血するときに蚊の吻のところにフィラリアの幼虫がぶら下がって出てきて、吸血の時に開けた穴から犬の体内に潜り込んでいきます。

フィラリア症予防のために投与する薬は、蚊に刺されてたときにおいていかれたミクロフィラリアが、犬の体の中で成長しながら心臓にたどり着き、フィラリア症という深刻な寄生虫による心疾患を引き起こす前に駆虫する薬です。さらに、内服タイプの予防薬は2~3日で代謝されて働きを終え、体内から抜けていきます。薬物残留の心配はありませんが、逆に長期間効果が持続するものではありません。また、予防薬はわかりやすいように毎月1回の投与を推奨していますが、上で述べたように、30日を過ぎると途端に手遅れになるということはありません。犬の体調不良や飼い主さんが忙しくて少し投与のタイミングが遅れてしまっても、たいてい駆虫は間に合います。しかし、極端な話、1月分飛んでしまったとなると駆虫の空白期間ができてしまうので、その後しっかり投薬をしても感染は免れられないこともあります。安心・安全のためにも月に1度の投薬を目安にしてください。




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